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石井 陽子 教授


医療現場の管理栄養士に役立つ
実践的な専門知識と主体的な学びを。

人体病理学、実験病理学、健康科学
石井 陽子 教授

医療現場で管理栄養士が直面する課題に向けて

私の専門分野は病理学です。病理学とは、病気になった個体や器官、細胞に生じている変化がどのようなものであるかを研究することで病態や病因を明らかにする学問分野です。 私は炎症や修復、再生といった疾患モデルの系の中で細胞内外のシグナル分子の動態について研究しています。 実は栄養や食品が研究テーマではないため、健康栄養科学研究科との親和性はあまり高くありません。 ですので、担当する「健康医学特論」の授業についてお話しいたします。

「健康医学特論」では、医療現場で使用する各種疾患のガイドラインや取り扱い規約などを教材に取り入れています。 疾患治療や予防のガイドラインには栄養に関する項目もありますので、病院などの医療現場で働く管理栄養士が就業現場での実践に生かすことができ、さらに、直面する多様な課題に応用できるのではないかと考えて授業を組み立てています。

また、社会で話題となっている医療や疾患、新薬などのテーマも加えています。 2023年度はアルツハイマー病修飾薬のレカネマブの作用機序と新薬誕生の背景を題材のひとつとしました。 関連する認知症全般の予防や進行抑制のためにWHOから発行されている国際的ガイドラインも教材にし、皆で読み合わせる学びも。 ガイドラインがさまざまな臨床研究とエビデンスを積み重ねて作成されている過程の理解も促せるよう努めました。 また、ガイドラインは新たな知見を得て変わっていくため、掲載されている内容は必ずしも正解ではなく、今後も変化していくものであることを学べるよう心がけています。

石井 陽子 教授

一人ひとりの要望に応じた授業を

授業で工夫をしているのが、履修者一人ひとりから学びたい分野の要望を聞き、授業に取り入れることです。 2023年度の履修者は4名で、医療現場に勤務する管理栄養士さんのみだったため、仕事で直面する課題や興味を各自に聞いてから授業内容を考案しました。 実施した授業テーマは、がんゲノム医療やがんの標準治療と先進医療、分子標的薬、iPS細胞を用いた再生医療、HPV感染関連疾患とHPVワクチン、炎症性腸疾患、骨粗鬆症などです。多様な治療にどのような意味があるかも学んでほしいと考えています。

教員として心がけているのは、一方的に解説するのはなく、Glexa(グレクサ)という本学のeラーニングシステムを活用し、文献や資料などを配信して読み込んでもらったうえで発表や討論をしてもらうこと。 Glexaには最新の論文や資料をアップロードしています。信頼できる資料を示すことで、履修者には自らの調査力を高めてほしいと考えています。 また、多忙な社会人院生さんが都合のよい時間に受講していただけるように、オンデマンド型の授業動画をアップロードするなどの工夫もしています。

石井 陽子 教授

専門的かつ積極的な学びの促進を

授業を通じて私が履修者に期待しているのは、一人ひとりが研究者として自分の課題を見つけ、受け身ではなく自分がどのように学べばよいかを探求して考える力をつけることです。時代に応じたガイドラインの変化にも自ら調べて追いつけるような学びをしてほしい。そのために、私は教員として何かを教えるよりも、目的や成果にたどり着くためのさまざまなツールを紹介して一緒に考える立場でありたいと考えています。
また、働きながら授業を受ける皆さんにとってつまらないと感じる内容では残念ですから、興味をもっていただけ、就業現場でも役に立ち、盛んに討論してもらえる授業にしたいと考えています。

実際には、授業を通じて触れ合う履修者の皆さんが思っていた以上に勉強されていると感じています。私にとっても新たな知見を一緒に学ぶ楽しさもあります。今後も履修者の要望を聞きつつ、私の視点からも多様な課題提案を履修者に行い、臨機応援に授業を展開していきたいと考えております。

石井 陽子 教授