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新井 武志 教授


長野県で研究フィールドを構築し、
大学院の研究力と自治体のつながりを生かした高齢者の健康支援へ。

応用健康科学、身体教育学、リハビリテーション科学・福祉工学、疫学・予防医学
新井 武志 教授

高齢者の健康施策を理解し、地域でPDCAサイクルを活用した研究を

私のメインの研究テーマは、高齢者の介護予防、フレイル予防です。 また、現在は、それに加えて、国が推進している地域包括ケアシステムの構築や地域共生社会の実現など、地域づくりに関する事業や研究にも取り組んでいます。大学院での担当授業は「健康栄養政策」、「地域健康づくり活動論」、「研究倫理と研究法」。 自治体が進めている健康施策の理解を深めつつ、私がこれまでに経験した地域づくりでの健康増進の取り組みなどを伝え、PDCAサイクルに沿った施策の推進を地域と共に学びます。

例えば、地域在住高齢者の方々に、単に「長生きしたいですか?」と問いかけると、「(自分は)長生きしたいかな?」と考え込んでしまう方がいらっしゃいます。 そこで、「健康であれば」という条件を設けると、ほとんどの方が「健康であれば長生きしたい。」とおっしゃられます。このように世界最高レベルの長寿を達成した我が国においては、単なる寿命ではなく、「健康寿命」に注目が集まっています。 そこで健康寿命を伸ばすため、種々の研究から得られたエビデンス(根拠)を基に健康政策を定めて実施しますが、実際にはうまくいかないことが多々あります。 そのような時には、施策の結果を評価して計画を再考し、改善してさらに実施する、いわゆるPDCAサイクルを回す必要があります。 こうした流れを踏まえ、よりよい施策を考えて地域で実践し成果をあげるために必要な要素を、過去の取組などから学びます。

また、「研究倫理と研究法」という授業では、修士論文執筆に必要な研究力や調査力、情報収集力とその活用力など、リテラシーの向上を図り、将来的に地域や就業現場のなかでリーダーシップを発揮できる人材の育成を目指します。

新井 武志 教授

体育・スポーツ分野から高齢者・介護の領域へ

私が介護や福祉の研究に携わるようになった最初のきっかけは、スポーツです。 身体を動かすことが好きで、高校まではサッカーに取り組み、体育・スポーツ・健康に関する最新研究と指導者養成を学べる筑波大学体育専門学群に進学しました。 部活はさまざまなスポーツ経験者が集まるアメリカンフットボール部に入部し、卒業時に保健体育科の教員免許を取得しました。 しかし、当時は教員の採用枠が少なかった一方、バブル期全盛期により民間企業の就活は学生の売り手市場だったことから、先輩に誘われるかたちで金融関係の会社に就職しました。

何年か金融の仕事をしているうちに、私がやりたかったのはスポーツや健康に関する仕事だと思い直し、大学に再入学。 理学療法士の資格を取得し、大学院に進学後は、当時から高齢者のトレーニング研究に積極的に取り組んでいた恩師のもと「東京都健康長寿医療センター研究所」で介護予防の普及や研究などに努めました。 スポーツの領域ではなく高齢者福祉や介護のフィールドに進んだのは、恩師の「これからの高齢化の時代は、高齢者に関する研究の必要性が高まっている」との言葉があったからです。 将来的な需要の高さを感じ、また、私が学んできた体育とリハビリテーションの知識を生かした社会貢献ができると感じました。

実際に高齢者福祉の分野での研究職のやりがいは、私がもつ知識や技術が多くの人に役立てられるうえ、フィールドに出ると、多くの学びがある点です。 地域住民の皆さんと一緒に研究を進められる楽しさを感じています。

新井 武志 教授

県内の自治体と連携し、地域包括ケアの取り組みを推進

長野県立大学大学院の着任に至った経緯は、私自身は東京都で生まれ育ったものの、両親が長野県の出身だったことが大きく影響しています。 幼少期から長期休暇や法事などのたびに家族で帰省する長野県が大好きで、いつか長寿県でもある長野県で働きたいと思っていました。 そうしたなかで健康栄養科学研究科の募集を知り、管理栄養士等の資格が不問だったことから応募しました。

本学では、地域をフィールドに教育や研究を展開されている先生が多くいらっしゃいます。 地域には子育てや高齢者福祉、災害対策や環境問題等さまざまな課題があり、住民、行政、企業、大学等の連携が求められています。「健康増進」は地域づくりにおける重要なキーワードの1つであると思います。 長野県は長寿県として知られていますが、さらなる健康寿命の延伸を目指した地域づくりを進めていく活動が期待されていると感じています。 今後は、行政や地域のさまざまな資源、学内のソーシャル・イノベーション研究科ともコラボした研究を進めていければと考えています。

一方で、私が今まで研究や介護予防事業に取り組んでいたフィールドが東京だったため、まだ県内の自治体とのつながりができていない状況です。 そこで、各分野で実績を残していらっしゃる本学の先生方の研究力や、学内の地域活性化の取り組みなどとも連携しながら、まずは県内でのフィールド構築からはじめることがこれからの展望です。 そのうえで、高齢者が要介護状態になっても住み慣れた場所で自分が望む生活を最後まで送れるような介護予防、フレイル予防や地域包括ケアの取り組みについて、普及に努めていきたいと考えています。

新井 武志 教授